不貞慰謝料金額の相場はどのくらい? 弁護士が解説します

慰謝料

こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。

配偶者に不貞があったとき、法的な対応として不貞慰謝料の請求が考えられます。
その際、不貞慰謝料の金額の相場がどのくらいになるかについては、請求する側も請求を受ける側もとても気になるところでしょう。

正しい知識を持っていないと、不当に低い金額しか受け取れなかったり不当に高い金額を支払ってしまったりすることにもなりかねません。

不貞慰謝料の金額の相場がどのくらいか、どのような要素で決まるのか、弁護士が解説します。

この記事のポイント

  • 不貞慰謝料の金額は、主に結果の重大性」と「行為の悪質性」から判断される。
  • 不貞慰謝料の相場は婚姻関係が破綻したか否か」で大きく2つのパターンに分かれる。婚姻関係が破綻したことは最も重要な「結果」であるからである。
  • 婚姻関係の破綻以外にも、さまざまな増額要素減額要素が関係して金額が決まることになる。増額要素、減額要素は証拠で立証しなければならない

不貞慰謝料の相場

不貞慰謝料は、配偶者に不貞行為があったことで被った精神的苦痛を慰謝する(なぐさめていたわる)ために支払われる損害賠償金の一種です。

精神的苦痛が大きいほど不貞慰謝料の金額も高くなるのですが、ここではまず不貞慰謝料の金額について法律がどのように考えているのかをご説明したうえで、相場の金額をご紹介します。

不貞慰謝料の金額決定の考え方

損害賠償金は、発生した損害を補填する、いわば「穴埋め」のためのお金です。
例えば、交通事故により怪我をして治療費がかかった場合、治療費相当の金額が賠償されることになります。ここでは、交通事故がなければ発生しなかった<治療費というマイナス>を穴埋めしゼロに戻すということが行われているわけです。

不貞慰謝料も損害賠償金の一種である以上、理屈は同じです。
<精神的苦痛というマイナス>を穴埋めしてゼロに戻すためにどのくらいのお金が必要なのか、というのが不貞慰謝料算定の本質となります。

とはいえ、精神的苦痛は人の心の中のことですから目に見えるものではありません。
そのため、実務においては外部から見て分かる事情から精神的苦痛がどの程度なのかを考えることになります。

その際の着眼点としてはさまざまありますが、特に重視されているのが「結果の重大性」と「行為の悪質性」の2つです。

結果の重大性

不貞行為の結果として起きたこと(結果)は、精神的苦痛を測る重要な指標となります。

不貞行為の発覚をきっかけにして精神的な疾患にかかったり別居することになったりするなど、結果が重大であればあるほど精神的苦痛も大きいといえるからです。

行為の悪質性

不貞行為の内容が悪質であればあるほど「結果」として生じる精神的苦痛は大きくなりやすいと考えられます。

不貞行為により生じる「結果」は目に見えるものばかりではありませんが、明確に表れていないとしても、行為が悪質であればあるほど精神的な苦痛も大きいとみなすことができるでしょう。

そのため、行為がどの程度悪質なのかによって不貞慰謝料の金額は変化することになります。

不貞慰謝料金額の相場は大きく2つのパターンに分かれる

不貞慰謝料の金額を最も強く左右するのは、「不貞行為によって婚姻関係が破綻したか否か」です。

不貞行為は、婚姻共同生活の維持という権利又は法的な利益を侵害する行為であるとされており、「婚姻関係の破綻」は不貞行為がもたらす基本的かつ重要な「結果」です。そのため、婚姻関係が破綻したか否かによって不貞慰謝料の金額の相場も大きく変化するというわけです。

具体的には、婚姻関係が破綻したか否かによって不貞慰謝料の相場は以下のとおり大きく異なることになります。

不貞慰謝料の相場
  • 婚姻関係が破綻した場合:150~300万円程度
  • 婚姻関係が破綻しなかった場合:50~100万円程度

婚姻関係が破綻した典型的なケースは、不貞行為の発覚をきっかけとして離婚をした場合です。また、実際に離婚には至っていなくても別居して離婚調停をしているなどの事情があればやはり婚姻関係が破綻したと判断されるケースも多いと考えられます。

一方、不貞行為が発覚しても同居を継続している場合には通常は婚姻関係が破綻していないと判断される可能性は高いでしょう。

なお、上記の金額はあくまで目安ですのでよほど悪質なケースなどの場合には上記の金額の範囲を超えて増減することもあります。しかし、基本的には次でご紹介するような「不貞慰謝料の金額に影響を及ぼす要素」により上記の金額の範囲内で増減額することになります。

不貞慰謝料の金額に影響を及ぼす要素

婚姻関係が破綻したか否か以外にも、不貞慰謝料の算定に影響を及ぼす要素は数多くあります。ここでは代表的なものをご紹介します。

(1)婚姻期間の長さ

婚姻期間が長ければ長いほど、構築してきた家庭内の平和も安定的で強固なものになっていると考えられます。そのため、不貞行為により家庭内の平和が侵害された場合、婚姻期間が短いケースと比較して損害は大きいと評価されます。

そのため、婚姻期間が長いことは不貞慰謝料の増額要素となります。

(2)不貞行為前の婚姻関係

不貞行為の前の婚姻関係(夫婦関係)が円満であった場合、不貞行為による婚姻関係へのダメージも大きなものとなります。

一方で、不貞行為の前から婚姻関係が悪化していた場合、不貞行為が発覚して婚姻関係が悪化したとしても不貞行為がすべての原因というわけではありません。そうすると、円満であったケースと比較すれば「不貞行為によって」生じた損害は限定的であるといえます。

したがって、不貞行為の前から婚姻関係が円満さを欠いていたり悪化していたりしたことは不貞慰謝料の減額要素となります。

(3)夫婦間に未成熟の子がいること

夫婦間に未成熟の子(独立して生計を立てることができない子)がいる場合には、不貞慰謝料の増額要素になります。

未成熟の子がある場合、未成熟の子がいない場合と比較して婚姻関係が破綻した場合の影響が大きく、今後の生活への不安なども強くなり精神的苦痛も大きくなると考えられるからです。

(4)不貞行為の期間・回数

不貞行為の関係が長期間継続している場合や不貞行為が多数回にわたる場合には、不貞行為の悪質性が強くなり不貞慰謝料の増額要素となります。

(5)不貞をした配偶者と不貞相手の間の子の妊娠

不貞をした配偶者と不貞相手との間に子が生まれたり懐胎して中絶したりした場合には単に情交関係があった場合よりも精神的苦痛も大きくなることは明らかですから不貞慰謝料の増額要素になります。

(6)不貞相手の認識(故意・過失)

不貞相手が、不貞をした配偶者が既婚者であると知りながら、むしろ家庭を壊す積極的な意思をもって不貞行為に及んでいた場合には、悪質ですので不貞慰謝料の増額要素になります。

一方、不貞相手が不貞慰謝料の支払い義務を負うのは不貞をした配偶者が既婚者であることを知っていた場合(故意)だけでなく、不注意で既婚者だと気づかなかった場合(過失も含まれます。故意があったケースと比較すれば、過失のケースでは不貞慰謝料の減額要素とされることもあります。

不貞相手から、「不貞をした配偶者が結婚していたとは知らなかった。」と主張されたときは故意と過失について問題となります。詳しくは下記の記事で解説しています。

(7)不貞発覚後の対応

不貞が発覚した後の対応により、不貞慰謝料が増減額される場合があります。

例えば、不貞が発覚した後、謝罪して不貞関係を完全に清算するなど誠実な対応を続けた場合には不貞慰謝料の減額要素とされることがあります。

一方、不貞が発覚した後も関係を継続したり、二度と不貞関係を持たないと約束したにもかかわらず約束を破って再び不貞行為に及んだりした場合には、悪質であるとして不貞慰謝料の増額要素となります。

不貞慰謝料の金額に関わる証拠

不貞慰謝料を請求するには証拠が必要であり、不貞慰謝料の金額を決めるための増額要素、減額要素についても証拠で立証しなければなりません。ここでは、不貞慰謝料の金額を決定する際に必要になる証拠をいくつかご紹介します。

なお、不貞行為があったか否かの証拠とは少し視点が異なります。不貞行為を立証するための証拠については次の記事で解説していますので、気になる方はご覧ください。

探偵の調査報告書

探偵の調査報告書は、不貞があったことを証明するために用いられることが多いと思います。ラブホテルなどへの出入りを捉えた写真とともに、いつどのような行動をしたかが記載されていることが通常です。

探偵の調査報告書は不貞行為があったことを立証する有力な証拠ですが、不貞行為の回数頻度逢瀬の際の行動を明確にすることができますので、不貞慰謝料の金額を決定するための証拠としても大きな意味を持ちます。

不貞相手とのメールやメッセージアプリの履歴

不貞相手とのメールやメッセージアプリの履歴も、不貞慰謝料の金額に大きな影響を及ぼす証拠です。

不貞相手とのやり取りがあると、不貞相手が不貞をした配偶者との関係をどのように認識していたか(故意や過失、家庭を破壊する意思があったか否かなど)、親密な関係がどの程度の期間継続していたかなどの情報を明らかにすることができるからです。

不貞相手との通話の録音や通話履歴

不貞相手との通話の録音も、メールやメッセージアプリの履歴と同様の意味を持ちます。

また、通話の録音まではない場合でも通話履歴が意味を持つ場合もあります。通話履歴は、親密な関係がどの程度続いていたのか連絡の頻度がどの程度だったかどちらから連絡することが多かったかなどの証拠になるからです。

不貞の自認書

不貞の自認書を当事者に書かせることができれば証拠にすることができます。不貞の自認書自体が証拠になるほか、他の証拠の持つ意味合いを補強することにも役立てることができます。

ただし、不貞の自認書には注意点がいくつかあります

まず、暴力を振るったり脅したりして書かせても証拠として無効であることです。それ自体が犯罪になるおそれもありますし、証拠として提出した際に反論されることもあり得ます。この点は時に大きな争いになることもありますので、可能であれば自認書を書かせるときのやり取りを録音しておくのがよいでしょう。

また、事実関係を5W1Hを意識して記載することが大切です
例えば、不貞をした配偶者に書いてもらう場合、「私は、Aさんとの間で、2022年1月頃から2022年7月頃まで継続して月に2回程度、主にAさんの自宅やB市内のラブホテルにおいて肉体関係を持ったことを認めます。」というように、不貞相手の氏名時期頻度場所何をしたかを明確に記載してもらうのがよいでしょう。

まとめ

この記事では、不貞慰謝料の金額の考え方をご説明したうえで具体的な相場と影響を及ぼす要素をご紹介しました。

慰謝料の金額は精神的苦痛の大きさによって増減しますが、適切な金額を見積もるのは簡単ではありません。また、不貞慰謝料が問題になったときは相手方と交渉をしたり訴訟に対応したりする必要もあります

請求をする場合も受ける場合も、弁護士に相談・依頼して対応を任せたほうが安心できるでしょう。

くずは凛誠法律事務所では、不貞慰謝料に関するご相談を髄時お受けしています。初回60分は無料でご相談をお受けしておりますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。

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