こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。
不貞慰謝料を請求するときには、不貞行為を立証する証拠が必要です。証拠があるからこそ裁判所は慰謝料の支払いを命じますし、相手方も「訴訟になれば敗訴する」と予測することでプレッシャーを受け交渉段階で一定額を支払い解決しようと考えるようになります。
ただ、どんなものでも有効な証拠になるわけではありません。証拠となり得る物はさまざまありますが、その有効性(証明力)もさまざまです。
この記事では、不貞行為を立証するための証拠について、有効な内容や考え方を解説します。
立証したいことを、裁判官が確信できるかが重要
不貞慰謝料請求に限りませんが、法律問題について証拠が有効かどうかを考えるときには、①立証したいことは何か、②その証拠で裁判官が確信できるかが重要になります。
以下、詳しくご説明します。
立証したいこと
証拠は、「立証したいこと」が前提として存在し、その「立証したいこと」を立証するために用いられるものです。
そのため、証拠の有効性を考えるには、立証したいことを明確にしたうえで、立証したいことをその証拠で裏付けることができるかどうかを検討しなければなりません。
不貞慰謝料を請求する際の「立証したいこと」になる事項はいくつかありますが、「不貞行為」はその代表例です。
不貞行為とは、「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」であるとされており、性行為・肉体関係がある場合を指すことが法律的な解釈となっています。
つまり、不貞行為を立証しようとすれば、性行為・肉体関係があったことを示す証拠が必要になるということになります。
例えば、配偶者と不貞相手とのメールの履歴は、性行為があったことを推測させる内容のやり取りであれば有効な証拠になります。
一方で、メールの履歴が、食事に行った話題や「好きだよ。」などの愛情表現をしている内容のやり取りだけであれば性行為があったかどうかは明らかにならないため、有効な証拠にはなりません。
裁判官が確信できるか
証拠により立証されるかどうかは最終的には訴訟において裁判官が判断します。裁判官は、第三者としての視点から、特定の事実が証拠から「確信」できる場合に立証されたと認めます。
ここでいう「確信」についてどの程度の水準が求められるのかは分かりにくいところかもしれません。判例は、次のような要旨の説明を行っています(最高裁昭和50年10月24日判決『ルンバール事件』)。
難しい説明になっていますが、ポイントを分かりやすく表現すれば、100パーセント確かだというまでの水準は必要がなく、一般的な人の視点で考えたときに「おそらくそうだろう」、「その可能性が高い」と言えれば立証が認められるということです。
あくまでイメージですが、数字にすると80パーセントくらいの度合で確かだと言えれば「確信」できると考えてよいでしょう。
例として、「昨日のラブホテル、楽しかったね。」、「気持ちよかった、またしよう。」などといったメールのやり取りがあったケースを考えてみます。
この例では、性行為がなければこのようなやり取りは行われないと考えられますから、性行為があった可能性は高いと考えるのが自然です。もちろん、実際には性行為はなく言葉遊びをしていただけといった可能性もゼロとは言えないかもしれませんが、前後のやり取りで言葉遊びだと明確に分かるケースでもない限り通常は考えにくいことです。
したがって、上記のようなメールのやり取りは不貞行為が認定されやすくなる有効な証拠といえます。
一方、「好きだよ。」といった愛情表現を含むメールのやり取りだけでは、性行為があった可能性は否定できないものの性行為がなかった可能性も十分にあり得ますから、有効な証拠にはならないでしょう。
有効な証拠の具体例
以上の考え方に基づいて、不貞行為を立証するために有効な証拠の具体例をいくつかご紹介します。
性行為中の写真や動画
性行為中の写真や動画は性行為の存在を直接的に立証する証拠となります。これらが有効な証拠となることに詳しい説明は不要でしょう。
また、性行為の最中ではなくとも全裸や下着姿で一緒に写っている写真なども、性行為を立証する証拠になりやすいと考えられます。
ラブホテルへの出入り、滞在を示す写真、調査報告書
ラブホテルへの出入り及び長時間の滞在を示す写真や探偵の調査報告書も非常に有効な証拠です。
ラブホテルは通常、性行為をする目的で利用される場所ですから、長時間滞在していた場合には性行為があったと考えることが自然です。
もちろん、室内で何が行われていたかまで分かるケースはほとんどないので、ラブホテルに入っても性行為はなかった可能性もゼロではなく、実際にその旨の反論がされることもあります。しかし、相当な根拠がない限り裁判所がそのような反論を考慮することはありません。
この点は下記の記事でも詳しく解説しています。
性行為があったことを推測させる内容の会話録音、メール等の記録
「昨日のラブホテル、楽しかったね。」、「気持ちよかった、またしよう。」などという会話の録音やメールのやり取りは、性行為がなければ行われることがないやり取りといえますので、不貞行為を立証する有効な証拠になり得ます。
ただし、「言葉遊びだった。」などと反論されることもあり得ますので、直接的なやり取りの部分だけではなくその前後についても証拠として確保しておくことをおすすめします。
一方で、「好きだよ。」などの愛情表現をしている内容のやり取りだけであれば性行為があったかどうかは明らかにならないため、有効な証拠にはなりません。
当事者が不貞行為を認める内容の書面や録音
当事者が不貞行為を認める内容の書面や録音も、不貞行為があったことを示す証拠になり得ます。できる限り場所や日時、回数、頻度などを具体的に明らかにしておくのがよいでしょう。
ただ、刑事事件で自白調書が「捜査官によって強制された。」などとしてたびたび争いになるのと同じように、当事者が不貞行為を認める内容の書面も「脅されて書かされた。」、「認めれば慰謝料は請求しないと騙されて書いた。」というように問題になることは少なくありません。
これを防ぐためには書面だけではなく録音を併用することが有効です。やり取り全体を録音するのがベストですが、最低限、書面を作成するときだけでもやり取りを録音してください。
書面を作成するとき、こちらが内容を誘導(細かく指定)するのではなく、「いつ、どこで、何回くらい性行為をしたのか書いてください。」などと指示して相手方に手書きさせるやり取りが録音できれば相手方からの反論を封じることができます。
効果の低い証拠を組み合わせることで立証できることもある
上記でご紹介したような証拠に当たらず、性行為があったことの裏付けにならない、あるいは別の可能性も考えられ確信に至らせることができない証拠は不貞行為を立証する効果が低いものになります。
しかし、効果の低い証拠でも組み合わせて使用することで補強し、不貞行為の立証につなげることができるケースもあります。
ただ、効果の低い証拠を闇雲に数多く集めても意味はありません。裁判官を納得させ確信に至らせることが重要なのは変わりませんので、それらの証拠を組み合わせれば立証できるか、どのような証拠を集めればよいかを弁護士に相談してみるのがよいでしょう。
また、不貞行為を立証できずとも、不適切な異性関係があり夫婦の婚姻共同生活の平和が害されたと言える場合には慰謝料を請求できることもあります。この点は下記の記事で詳しくご説明していますので参考にしてください。
まとめ
この記事では、不貞行為を立証するために有効な証拠について、内容や具体例を挙げてご説明しました。
不貞慰謝料を請求するためには判例や裁判所の考え方を理解して十分な証拠を用意しておく必要があります。また、この記事で紹介した証拠であっても他の証拠での補強を行うなどしなければ裁判所に誤った判断をされてしまうケースもあります。
不貞慰謝料請求の証拠に関しては、自身だけで対応するよりも専門家である弁護士に相談しながら収集・活用したほうが望ましいでしょう。
くずは凛誠法律事務所では、不貞慰謝料の請求や証拠に関するご相談を髄時お受けしています。初回60分は無料でご相談をお受けしておりますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。