こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。
交通事故の怪我で後遺障害が残ったとき、適切な賠償を受けるためには後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
しかし、後遺障害等級についてはあまり馴染みのない方も多く、いまいちよく分からないという方も少なくないでしょう。中には、「後遺障害等級の認定を受けることで不利益やデメリットを受けたりしないのか。」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、後遺障害等級が認定されることで不利益やデメリットを受けることがないのかについて弁護士が解説します。
【結論】後遺障害等級の認定によるデメリットはない
結論を端的に申し上げると、交通事故で受けた怪我が原因で自賠責保険における後遺障害等級が認定されても、不利益やデメリットが生じることはありません。
「周囲に知られるのではないか。」、「社会的な不利益を受けるのではないか。」といった不安を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことはありませんのでご安心ください。
これらの疑問についてはこの記事の続きで詳しくご説明します。
念のため、統計情報もご紹介しておきます。
後遺障害等級の認定機関である損害保険料率算出機構が公表している統計情報によれば、後遺障害を理由とする自賠責保険金の支払い件数は次のとおりとなっています。
年度 | 自賠責保険金の支払い件数 |
---|---|
2016年度 | 55,911件 |
2017年度 | 51,319件 |
2018年度 | 49,566件 |
2019年度 | 48,158件 |
2020年度 | 45,095件 |
後遺障害を理由として自賠責保険が保険金を支払ったということは、その分だけ後遺障害等級の認定があったことを意味します。つまり、自賠責保険の後遺障害等級の認定は毎年5万件前後行われているということになります。
これだけの認定数があるのに、誰かが後遺障害等級を認定されたことについての報道に接したり後遺障害等級の認定が原因で不利益を受けた話を聞いたりしたことはおそらくないのではないでしょうか。
このことからも、後遺障害等級が認定されることによるデメリットがないことは実感いただけるでしょう。
後遺障害等級認定によるデメリットについてよくある疑問
後遺障害等級の認定でデメリットを受けることがないかとご心配される方が疑問に思いやすい点についても解説しておきます。
周囲に後遺障害等級の認定を知られるのではないか?
後遺障害等級の認定を周囲に知られることはありません。
後遺障害等級の認定には医師、弁護士、損害保険会社、損害保険料率機構(後遺障害の審査を実際に行う機関)などが関わり、後遺障害等級が認定されたことに関する情報を保有することになりますが、いずれも職務上の守秘義務や個人情報を保護する法的義務を負っています。
これらの守秘義務や個人情報を保護する法的義務は、たとえ家族であっても本人の同意なしには解除されないものですので、秘密が漏れる心配はないと考えてよいでしょう。
また、後遺障害等級の認定については書面により通知されるだけで、官報等により公にされることもありません。
したがって、後遺障害等級の認定を受けた本人が話さない限り、周囲に知られる心配はないといえます。
障害者手帳が発行されるの?
自賠責保険で後遺障害等級が認定されたからといって、必ずしも障害者手帳の発行されるわけではありません。
自賠責保険における後遺障害等級の認定は、交通事故により生じた後遺障害を審査・判定し、支払うべき保険金や賠償金額を算定することを目的にしたものです。
一方、障害者手帳は行政により障害の認定を受けることで発行される手帳であり、手帳を持つことでさまざまな支援を受けられるようにすることが目的となっています。
両者は制度の趣旨や基準が異なりますので、自賠責保険における後遺障害等級が認定されても障害者手帳は発行されないケースもありますし、障害者手帳が発行された場合でも自賠責保険では後遺障害等級が認定されないケースもあります。
また、自賠責保険の後遺障害等級認定について、行政が自動的に状況や認定結果を把握することもありません。
後遺障害等級が認定されることで就職や仕事などで不利益を受けないか?
後遺障害等級が認定されたからといって、就職や仕事で不利益を受ける可能性は考えにくいところです。
そもそも上記でご説明したとおり、後遺障害等級の認定結果は他人に知られるものではありません。また、後遺障害等級の認定を受けたことは勤務先に通知する義務はありませんし、採用面接の際に告知する義務もありません。
ただし、後遺障害によって担当業務に支障があったり業務上の事故につながるおそれが生じたりするときは、(後遺障害の等級ではなく)後遺障害の内容等について告知しておくようにしましょう。告知せずに業務を行い勤務先に損害を与えたときは勤務先から損害賠償請求を受けるおそれもあるからです。
後遺障害の内容等を告知することで業務内容が制限されたり不採用になったりといった不利益はあり得ます。しかし、それは後遺障害等級の認定があったかどうかには関係なく、心身に故障があるという事実に由来することです。
後遺障害等級の認定を受けなかったとしても、事実として業務上の支障となる心身の問題があるならばやはり勤務先に告知すべきですし、不利益を被るおそれはあります。後遺障害等級の認定を受けなかったとしても後遺障害が消えるわけではないのです。
問題を取り違えて後遺障害等級の認定を回避するという誤った選択をすることはないようにしましょう。
むしろ、上記のような不利益を受けるおそれがあることについて適切な補償を受けるためにも、積極的に後遺障害等級の認定を受けるべきであるといえます。
後遺障害等級の認定を受けないほうが大きなデメリットになる
ここまでご説明したとおり、後遺障害等級の認定を受けることで不利益やデメリットを受けることはありません。
一方で、後遺障害等級の認定を受けたかどうかには関わりなく、後遺障害が残ってしまった場合には就職や昇進、昇給の困難や業務内容・職種の制限などが生じ、本来得られたはずの収入が得られなくなる不利益を受けることがあります。このような不利益を「逸失利益」といいます。
逸失利益は交通事故がなければ発生しなかった損害ですので、加害者側に賠償してもらうべきです。そして、そのために必要なのが後遺障害等級の認定であり、認定を受けなければ逸失利益の適切な賠償を受けることは非常に困難です。
また、後遺障害が残った場合には精神的な苦痛を受けることが通常ですから、相応する慰謝料の支払いを求めるべきですが、これも後遺障害等級の認定がなければ後遺障害に対応した慰謝料の支払いを受けることはできなくなります。
つまり、後遺障害等級の認定を受けないほうが、適切な賠償を受けられないという大きなデメリットを受けることになるといえます。
後遺障害が残ってしまったのであれば、迷わず後遺障害等級の認定を受けるようにしてください。
まとめ
この記事では、後遺障害等級が認定されることで不利益やデメリットを受けることがないこと、むしろ後遺障害等級の認定を受けないほうがデメリットになることを解説しました。
後遺障害等級の認定は書面審査ですから、必要な書類を不備なく提出することが適切な認定を受けるために不可欠です。そのためには、交通事故に精通した弁護士の力を借りることをおすすめします。
くずは凛誠法律事務所では、交通事故や後遺障害に関するご相談を随時お受けしております。初回相談料は無料(又は弁護士費用特約により自己負担なし)で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。