取り決めたのに面会交流が実施されないときは何ができる? 弁護士が解説します

親権・面会交流

こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。

面会交流は、非監護親が子どもと関わる重要な機会ですが、その実現には両親双方の協力が不可欠です。

しかし、面会交流について協議し条件等を取り決めたのに、取り決めどおりに面会交流をさせてもらえないこともあります

このようなときにはどう対処するのがよいのでしょうか。弁護士が解説します。

この記事のポイント

  • 面会交流の拒否が正当な理由によるものかどうかで面会交流を実現できる可能性は変わる。正当な理由での拒否の場合はまず非監護親において改善を要するケースも多い
  • 不当な理由で拒否されている場合、面会交流の取り決めが調停・審判で行われたかどうかで取れる方法が変わる。調停・審判を経ない協議で取り決めていた場合は調停を申し立てるのが第一歩となる。
  • 調停・審判で取り決めていた場合は履行勧告間接強制再調停の申立て慰謝料請求などの方法で面会交流の実現を目指すことができる。
  • 重要なのは、面会交流を実現させることが最終目標であることを忘れず、ケースごとに最適な方法を取るべきとの行動指針を見失わないこと

面会交流の拒否が正当な理由によるものか

始めに行うべきことは、監護親が面会交流を拒否する理由を確認し、それが正当な理由なのかどうかを検討することです。

面会交流を取り決めていても、正当な理由によって拒否されているのであれば面会交流を実現することは困難だからです。

正当な理由での拒否

面会交流を拒否する正当な理由があるとされやすい場合には、下記のようなケースがあります。

正当な理由があるとされやすいケース
  • 面会交流中に子どもに暴力を振るうなどしたために子どもが怯えて面会交流を嫌がっている。
  • 非監護親が面会交流時に子どもを連れ去ろうとした。
  • 非監護親が面会交流条件について重大な違反を行った。

これらは主として非監護親の行動に問題があるケースといえます。

これらのケースでは、監護親に約束の履行を強硬に迫るのではなく、非監護親において問題行動の再発防止を誓約するなど誠実な対応を行っていかなければ面会交流は実現できません。

場合によっては、調停により面会交流の実施条件を変更するなど、面会交流実現に向けた話し合いを新たに行わなければならないケースも考えられます。

不当な理由での拒否

監護親が不当な理由により面会交流を拒否していることもあるでしょう。

次のような理由で面会交流を拒否している場合、不当な理由による面会交流拒否とみなされる可能性があります。

不当な理由であるとされやすいケース
  • 監護親が非監護親のことを嫌いだから会わせたくない。
  • 非監護親が養育費を支払わない。
  • 監護親が再婚し、子どもを監護親の新しいパートナーに馴染ませたい。

養育費に関しては誤解されやすいところですが、養育費の支払いと面会交流の実施は対価関係にはないので交換条件のように扱うことはできません。

不当な理由による面会交流の拒否に対しては、次項以下で説明するような方法で取り決めどおりに面会交流をさせるよう監護親に求めていくことができます

子どもが『会いたくない』と言っている。」という理由で面会交流を拒否されるケースもあるでしょう。
 
子どもが15歳以上の場合には子どもの意思が尊重されるべきですが、子どもの年齢が低い場合、子どもが「会いたくない」と言っているだけで面会交流の拒否が許されるとは限りません。例えば、離婚前後に両親の争いがあったことで、子どもが監護親に配慮したり両親間の争いに巻き込まれたくないと考えたりして、「非監護親に会いたくない」と言っているかもしれないからです。
 
子どもが「会いたくない」と言っている場合には、子どもの表面的な言動だけに基づくのではなく、会いたくないと言っている理由や原因を把握し、監護親・非監護親の双方が適切に対応することが必要です。

調停・審判を経ていない場合は調停を申し立てる

不当な理由で取り決めどおりに面会交流させてもらえないときの対処方法は、面会交流の取り決めが調停・審判でされたかどうかにより変化します

面会交流の取り決めが調停・審判を経ない協議によるものであった場合には、まずは面会交流の調停を申し立てましょう。

調停は裁判所で行う話し合いであり、裁判所の担当者である調停委員が間に入るためスムーズな話し合いが期待できます。調停により解決ができなかった場合には手続が審判に移行し、裁判所により強制力のある判断をしてもらうことができます。

調停で解決すれば調停調書、審判があった場合には審判書という裁判所の正式な書面が作られます。これらの書面があれば、次項で説明する履行勧告や間接強制といった対処方法を取ることが可能になります

なお、面会交流を協議で取り決めた際に書面(協議書など)にしていれば、無理のない条件・内容である限り、調停・審判においても従前の話し合いの結果として一定程度尊重してもらえる可能性があります。したがって、調停・審判によらない協議がまったくの無駄になるわけではありません

調停・審判で面会交流条件を取り決めた場合の対処法

面会交流の取り決めが調停・審判で行われた場合には、次の方法を取ることができます。

履行勧告

対処方法のひとつとして、「履行勧告」(家事事件手続法第289条)があります。履行勧告とは、家庭裁判所に申し出て、家庭裁判所から監護親に対し「取り決めどおりに面会交流をさせてください。」と促したり説得したりしてもらうことができる制度です。

履行勧告には費用がかかりませんが、調停・審判で面会交流条件が取り決められていないと利用できません。

家庭裁判所からの連絡や説得をしてもらうことができるため、監護親が面会交流を行う方向に気持ちを変化させることが期待できます。ただし、履行勧告には強制力はないので、監護親が任意に面会交流を実施せず拒否し続ける場合には別の方法を取る必要があります。

間接強制

調停・審判で取り決めた内容を守らない場合、強制執行を行うことも選択肢となります。強制執行にはいくつか種類がありますが、面会交流について可能となる強制執行は「間接強制」です。

間接強制は、調停・審判で取り決めた内容を守らない場合にペナルティとしてお金の支払い義務を課す制度です。

取り決めどおり面会交流をさせない場合に1回あたり数万円~5万円程度の支払い義務を生じさせることが一般的ですが、具体的な金額は裁判所が事案ごとに適切な金額を定めることになります。
金銭的なペナルティを課すことで監護親にプレッシャーを与え、調停・審判の取り決めを守らせるという強制方法といえます。

ただし、間接強制を行うためには、調停・審判において面会交流の場所や日時などの内容を非常に具体的なものにしておく必要があります。例えば、面会交流の場所について「非監護親の住所地」、日時について「毎月第1土曜日の午後1時から午後4時まで」というように定めます。

このように定めておかないと、どういった行為をすれば取り決めを守ったことになるのかが一目瞭然とはならないからです。
そのため、間接強制を行うことも視野に入れているのであれば、調停・審判の段階で家庭裁判所との間で調整しておく必要があることに注意しましょう。

一方で、上記のように間接強制を見越した定め方をすると面会交流を柔軟に行うことが難しくなるというマイナスの側面もありますので、初回の調停において任意に面会交流が実現できる見込みがあるケースでは家庭裁判所に難色を示されることもあります。

再調停

一度調停や審判で取り決めても、調停を再度申し立てることは可能です。再調停においては、それまでの取り決めをベースにしながら、その後に生じた問題などがあればその問題に対応した面会交流条件を改めて取り決めることができます。

監護親が不当な理由で拒否しているのであれば、家庭裁判所から説得してもらったり間接強制を見越した調停・審判にしてもらったりすることもできるでしょう。

面会交流が実施できていないのは何かしらの問題が生じている可能性がありますので、面会交流の実施に関する問題を抜本的に解決するためには再調停も有力な選択肢といえます。

慰謝料請求

監護親が調停・審判の取り決めに反し、面会交流を不当な理由で拒否する場合には、非監護親が子どもと面会交流する権利を侵害するものといえますから、慰謝料請求の対象になります。

金額については面会交流拒否の理由や経緯、面会交流させなかった期間、非監護親が面会交流を求めた際の対応などにより決まります。過去には面会交流拒否が長期にわたり悪質であったとして500万円もの慰謝料が認められたケースもありますが(静岡地裁浜松支部判決平成11年12月21日)、一般的な相場としては数十万円程度であると考えられます。

ただし、慰謝料請求をしたからといって面会交流ができるようになるかは別問題です。あくまで監護親にプレッシャーをかける方法の1つと考えましょう。

最終的な目標は面会交流の実現

面会交流拒否が正当な理由によるときは、非監護親においても真摯な対応が求められるケースも少なくありません。

一方で不当な理由で拒否されているのであれば、監護親を説得し、場合によっては強制力を働かせることも必要になってくるでしょう。

ただし、最終的な目標は面会交流の実現であるはずです。面会交流拒否の正当な理由にはならないながらも監護親・非監護親の間に何らかの問題が生じているときに強制手段を用いると、ますます監護親を頑なにさせ結果的に面会交流の実現が遠のくおそれもあります。

重要なのは、面会交流を実現させることが最終目標であることを忘れず、ケースごとに最適な方法を取るべきとの行動指針を見失わないようにすることです

まとめ

この記事では、取り決めどおりに面会交流をさせてもらえない場合の対処方法についてご説明しました。

面会交流について取り決めたのに面会交流が実現できていないのは、当事者同士による話し合いでは解決できない深刻なケースであることも多いでしょう。その場合は弁護士に相談、依頼することを検討してほしいと思います。

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