夫婦の双方が親権を希望しているとき、親権者をどう決める? 弁護士が解説します

親権・面会交流

こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。

未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、離婚後の親権者を決めなければなりません。日本では共同親権は認められていませんから、親権者は夫婦の一方のみとなります。

しかし、親権について双方が希望していて協議(話し合い)がまとまらないこともあるでしょう。
このようなケースでは、親権者をどう決めればいいのでしょうか。この記事では、親権の考え方や親権者を決めるときの流れとポイントを解説します。

親権とは

親権とは、未成年の子どもの住む場所を決めたり教育をしたり、財産を管理したりする権利や義務のことをいいます。

「親権」という名称ではあるものの、親権は権利であると同時に義務でもあります(民法820条)。
親権者は子どもの利益や幸せを守るために適切に親権を行使する義務を負っているのです。

夫婦が結婚している間は、親権は夫婦双方が持ちます。
一方、夫婦が離婚する場合、日本では共同親権が認められていないので片方が単独で親権を持つことになります。離婚の際には親権者は必ず決めなければならず、親権者を決めないまま離婚することは認められません。

親権は、その名称から受ける印象とは異なり、権利よりも義務の性質が強いと考えられています。
親権は「親のため」のものではなく、あくまでも「子どものため」のものであることを心に留めておきましょう。この考え方は、親権者を決める際の基本であり、最も重要な指針となります。

親権者を決める手続や流れ

親権について確認したところで、親権者の決め方を確認しておきましょう。
基本的には次のような流れで親権者を決めることになります。

夫婦間で協議して決める

親権者を決める第一の方法は、夫婦間で話し合い、協議の結果として決めることです。夫婦双方が納得して親権者を決めることができれば一番よいといえるでしょう。

協議により決めることができれば、離婚届にある親権者の欄に記入して届け出ることになります。後々のトラブルを防ぐために、取り決めた内容を記載した合意書を作成することも有用です。

協議で決まらないときは調停

相手方が協議に応じてこない場合や、夫婦間で協議をしても親権者が決まらない場合、離婚すること自体もできません。親権者を決めなければ離婚は認められないからです。

親権者が協議で決まらない場合、次の選択肢は調停(離婚調停)を行うことです。

調停は、家庭裁判所で行う話し合いの手続です。
夫婦間だけでの協議とは違い、調停では「調停委員」という裁判所の職員が間に入り、調停委員が夫婦双方と交互に個別面談をすることで話し合いが進行します。
そのため、調停では夫婦は原則として顔を合わせることなく話し合うことになります。また、調停委員が必要に応じて意見を出してもくれますので、スムーズな話し合いが期待できます。

調停でも決まらないときは裁判に移行する

調停は裁判所の手続ではあるものの、あくまで話し合いの手続です。調停でも合意がまとまらず調停が不成立となった場合は裁判(訴訟)に移行し、離婚を認めるか否かや親権者について裁判所の判決を受けることになります。

離婚調停が不成立となった場合、裁判ではなく調停に引き続いて行われる審判(「調停に代わる審判」)の手続で親権者についての裁判所の判断が示されることもあります。ただ、非常に稀ですのであまり意識せずともよいでしょう。

裁判所が親権者を決定するときの基準・ポイント

離婚調停でも親権者が決まらない場合、裁判所が親権者を決定します。したがって、親権を獲得するためには、裁判所に「親権者にふさわしい」と認めてもらわなければなりません。

これまでも述べてきたとおり、親権は子どものためのものです。そのため、裁判所では、親権者となることで子どもの利益になる方が親権者にふさわしいという考え方が採用されています。
その際、裁判所は次のようなポイントを総合的に考慮することになります。

過去の子育ての状況や関与の程度

過去の子育ての状況は極めて強く重視される事項です。
これまでの子育てを担っていた者は、今後も問題のない監護ができると期待できるからです。

また、これまでの子育てに多く関与していればそれだけ子どもとの精神的なつながりも強いと考えられ、親権者となることで子どもの精神的な支えにもなるとみなされやすいといえます。

現在の子育ての状況、安定性

現在の子育て状況も重要な判断ポイントとなっています。

裁判所は、子どもの現状を変更することは子どもにとって負担になると考えます。
そのため、裁判所は現在の子育て状況が安定しているのであれば現状を維持するほうが子どものためになると考え、現在子どもを実際に監護養育している側を親権者と決定しやすい傾向があります。

将来の子育ての状況や見通し

将来、問題なく子育てができる環境が整っているかという観点から重要になるポイントです。
仕事が忙しすぎて子どもと関わる時間が取れないなどということはないか、親族のサポートが得られるか、親権者となる者の健康状態に問題がないかなどが考慮されます。

経済力についても将来の子育てに関して考慮される要素ではありますが、養育費により調整できると考えられているため大きく重視されるものではありません。

子どもの年齢

子どもが乳幼児であるなど極めて低年齢である場合には母性的関わりが重視され、母親が親権を獲得する可能性が高まります。

一方で、子どもの年齢が大きくなればなるほど、子どもの年齢のみを理由に判断が左右されることは少なくなります。

子どもの意向

子どもが15歳以上の場合、子どもの意向は強く尊重されます。この年代になれば社会性が身につき、どちらの親と暮らすべきかを自分自身で判断できるようになっていると考えられていますから、その意向を尊重することが子どもの利益につながるからです。

裁判所は、実務上、子どもが概ね10歳以上の場合は意向を確認するようにしているようです。
ただし、15歳以上の子どもの場合と比べて重視される程度は相対的に低くなり、子どもの精神的発達などに応じて参考にされるまでにとどまります。

面会交流実施の意向や準備

子どもが健全に成育するためには、離婚後に親権者とならなかった親とも関わりを持つことが望ましいとされています。その方法が面会交流です。

裁判所は、親権者となった側が親権者とならなかった側に対して面会交流を積極的に認める意向や準備があるかどうかを親権者を決定する際の判断要素にしています。

協議や調停で親権について話し合うときのポイント

親権は離婚において定めるべき事項の中でも特に対立しやすいものといえます。親権の話し合いがつかないことで離婚できないケースは決して珍しくありません。

しかし、離婚は非常にエネルギーのいることです。きれば裁判ではなく協議や調停などの話し合いで進めたいと考える方は多いでしょう。
ここでは、協議や調停で親権者を決めるときのポイントを詳しくご説明します。親権について揉めていたり揉めそうなときは、次のポイントを試してみるとよいかもしれません。

①裁判所が親権者を決定するときの基準を参考にする

この記事でも説明したとおり、協議でまとまらなければ調停、調停でも解決しなければ裁判へと手続が進んでいき、裁判になれば裁判所が親権者を決定します。つまり、親権について争ったときは、最終的に裁判所の基準によって親権者が決まることになります。

このことを考えると、協議や調停でも「裁判で最後まで争ったときと同じ結果」になるのであれば、双方が納得できる可能性は高いでしょう。
具体的には、この記事でもご紹介した裁判所が親権者を決定するときの基準を参考にしながら夫婦で話し合うことで、親権者をスムーズに決めることが期待できます。また、話し合う際の基準が明確になることで、冷静な話し合いができることもメリットです。

②面会交流等の内容や条件を調整する

通常、子どもは親権を持つ親とともに生活することになり、親権を持たない側の親は子どもと関わる機会が相対的に少なくなってしまいます。このことが親権で揉める大きな原因となっているケースもあるでしょう。

この場合、面会交流や子どもとの関わりについて親権者でない親に配慮した内容や条件にすることが解決の糸口になる可能性があります。

例えば、直接会って面会交流する以外にも、子どもの学校行事に参加できるようにしたり、子どもと携帯電話で直接連絡を取れるようにしたりすることが考えられます。
こうすることで親権者にならない側が「離婚した後も子どもと十分に関われるならば親権にこだわらなくてもよい」と思えれば、親権について争う必要がなくなることも期待できます。

③弁護士に依頼する

どうしても協議が上手くいかない場合は弁護士に依頼することも有力な方法です。

弁護士は、法律的な知識に基づき、相手の意見も聞きつつ依頼者の考えを説明したり反論したりして交渉します。弁護士が介入すること自体が、依頼者が真剣であり諦めない意思を持っていることを相手に示す効果があるといえるでしょう。

相手も、争いが継続すれば調停や裁判に移行することや法律的な見地から議論を行う必要があることを強く意識するようになるかもしれません。そうなれば、当人同士で話し合っていたときとは対応や考え方を変化させることもあり得ます

親権についてお困りのときは当事務所にご相談ください

この記事では、親権者を決める際のポイントや考え方をご説明しました。
親権を含め離婚は自身で進めることもできますが、どうしても難しいケースでは専門家である弁護士に相談、依頼することを検討したほうがよいでしょう。

くずは凛誠法律事務所では、経験豊富な弁護士が離婚に関するご相談をお受けしております。初回相談は無料ですのでお気軽にご相談ください。

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