養育費はどうやって決めるべき? 弁護士が解説します

婚姻費用・養育費

こんにちは、大阪府枚方市にある「くずは凛誠法律事務所」です。

養育すべき子どもがいる夫婦が離婚する場合に、取り決めるべきことの一つが養育費です。
しかし、統計調査によれば母子家庭の54.2パーセント、父子家庭の74.4パーセントが養育費の取り決めをしていないとの結果が出ています(厚生労働省『全国ひとり親世帯等調査結果報告』平成28年度結果)。

養育費の分担は子どもが健全に育つために非常に重要なものであり、父親、母親にとっては果たすべき義務ですから、養育費については適切に取り決めを行うべきです。

では、養育費をどうやって取り決めればよいのでしょうか。弁護士が解説します。

この記事のポイント

  • 養育費とは、離婚した後、非監護親が監護親に対し、子どもの生活費など監護に要する費用として支払うお金のことをいう。
  • 養育費は協議調停審判・訴訟といった手続きで決定する。
  • 養育費の金額子どもの人数、年齢と父母の収入により標準算定表に従って決めることが多い
  • 養育費の終期子が未成熟でなくなるまで。成人していても、大学生の間は養育費の支払いが必要なケースは珍しくない。
  • 過去の養育費をまとめて支払わせることは難しいケースもあるので、離婚と同時または離婚後すぐに請求するようにする
  • 養育費を請求しない合意も可能であるが、かといってその後養育費をまったく請求できなくなるわけではない

養育費とは

養育費とは子どもの生活費や学費など、子どもの監護に要する費用のことですが、特に離婚後、非監護親(非同居親)から監護親(同居親)に対して支払われる子どもの監護に要する費用のことを「養育費」と呼んでいます。

夫婦が離婚しても子どもにとって両親であることには変わりがありません。
そのため、離婚した後も、子どもと同居して実際に生活の面倒を見ている監護親はもちろん、非監護親も親として子どもの養育費を分担する責任があります。

監護親は子どもと生活する中で衣食住の費用や学費などを実際に負担、支出しますが、非監護親は監護親に対し「養育費」として一定金額を支払い分担義務を果たすことが一般的です。

養育費は毎月一定額を支払う方法を取ることが多いですが、疾病や事故での怪我により子どもの医療費が大きくかかったなど想定外の費用が生じた場合は別途協議して分担することになります。

養育費を取り決める方法

養育費を取り決めるには、①協議、②調停、③審判・訴訟という方法があります。通常はこの順で手続きを進めることになります。

養育費の取り決めは離婚と同時に取り決めることが多いですが、離婚した後に養育費を請求して取り決めることもできます

協議

協議は、父母の間で話し合って養育費の取り決めを行うことです。お互いが納得できれば取り決めることができ、裁判所や役所などに届け出る必要もありませんので手続きにかかる負担は最も少ないといえます。

協議がまとまった場合には口約束で終わらせるのではなく、協議書(合意書)または公正証書にしておくのがよいでしょう。

なお、協議書と公正証書の違いや利点は下記の記事で説明していますので、参考にしてください。

調停

協議で養育費を取り決めることができない場合には、調停で取り決める必要があります

調停は家庭裁判所で行う話し合いであり、家庭裁判所の調停委員が双方の意見や資料を参考にしながら適切な解決ができるよう話し合いをリードしてくれます。そのため、当事者だけで行う協議よりもまとまりやすく、結果も適切なものになりやすいといえます。

ただし、調停も話し合いの手続きですので、妥協できず合意に至らない場合には調停だけで解決することはできません

審判・訴訟

調停でも養育費が取り決められない場合には、審判訴訟により裁判所が養育費を定めます

離婚が既に成立しており、離婚後に養育費を定める場合には審判です。調停をしても養育費について合意できない場合、調停手続きは自動的に審判手続きに移行します。

一方、離婚と同時に養育費を定める場合には、養育費だけでなく離婚についての判断も行う必要があるので審判ではなく訴訟を提起しなければなりません。

養育費の金額

養育費を取り決める場合、養育費の金額は父母双方の最大の関心事であることが多いでしょう。養育費の金額はどのくらいが適切なのか、どのように決めるのかをご説明します。

養育費の算定方法

養育費は監護親と非監護親の双方がそれぞれの経済状況に応じて「公平に」分担すべきであると考えられています。

公平な養育費を定める方法としては、個別のケースごとに双方の収入や実際に必要な生活費を調査検討して金額を決定するという方法もあり、過去にはこのような方法が実務上行われていた時期もあります。しかし、この方法は手間や時間がかかりますし、「無駄遣いかどうか」を客観的な基準で判断することが困難であるため、現在の実務では採用されていません

現在の実務では、統計データから標準的な子どもの生活費を決定し、養育費の額を決める方式(標準算定方式が取られています。
標準算定方式では子どもの人数と年齢、父母双方の収入が分かれば、一定の算式を用いることで基準となる養育費の金額を割り出すことが可能です。

標準算定表

標準算定方式に基づいて裁判所が作成したのが「標準算定表」であり、裁判所のホームページでも公開されています(裁判所ホームページ「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」)。

標準算定表は子どもの人数と年齢により用いる表が分かれています。
例えば、5歳と3歳の子2人の養育費を考える場合、「(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」を使います。

いずれの表も横軸は養育費を受け取る側の収入縦軸は養育費を支払う側の収入となっており、その重なるところが標準的な養育費です。
例えば、上記の例で出した表3を使う場合、監護親の給与収入が200万円、非監護親の給与収入が600万円であるとすると、横軸が「給与200万円」、縦軸が「給与600万円」の重なる「8~10万円」が標準的な養育費であるというわけです。

協議や調停による場合、必ずしも標準算定表どおりにしなければならないわけではありませんが、審判や訴訟で裁判所が養育費の金額を決める場合は標準算定表のとおりにすることがほとんどです。
そのため、多くのケースでは、協議や調停でも標準算定表どおりの金額で話し合いを進めることになります。標準算定表以外の金額にするよう争っても最終的に裁判所が標準算定表のとおりに決めてしまうので、争う意味があまりないとの共通理解が得られるケースが多いからです。

養育費はいつまで支払い続けるべきか(養育費の終期)

養育費は、子どもが未成熟である場合に支払われるものであるので、子どもが未成熟ではなくなったときまでが支払期間となります。

未成熟」とは、ある程度の年齢になり独立して生計を立てられる、あるいは立てるべき状態になっていないことを言い、成人年齢とは一致しません
そのため、夫婦の収入や学歴、社会的地位などから考えて子どもが大学に進学しても不釣り合いでなければ、成人していても大学生の子どもは未成熟であり、養育費を支払う必要があると扱われます。

そのため、子どもが幼く、将来大学に通うかどうかは分からない場合でも、例えば両親の学歴が大学卒業(または大学卒業と同程度)であるケースでは養育費支払いの終期は大学卒業の年齢までとすることが多いです。

過去の養育費を遡って請求できるか

養育費は離婚をしたときから支払うべきですが、離婚後養育費を請求しないまま時間が経過してしまった場合、それまでに支払われるべきだった養育費をまとめて支払うように請求できるかは難しい問題です。

養育費は原則として請求したとき以降の分しか請求できない

一般的には養育費の請求をしたとき以降の分しか請求できないとされています。

これまで請求されていなかったのに何年も経ってからまとめて請求されると、養育費を支払う側は多額の資金を一時に用意しなければならず過酷になると考えられるからです。

ただし、養育費を請求せずに時間が経っていても、離婚に至るまでの事情や養育費を支払う側の経済力などの事情を考慮すれば過去の養育費をまとめて支払わせても過酷ではないと言える場合には、請求する前の分についても養育費を請求することができるケースもあります

養育費はできるだけ早期に請求しておくことが大切

上記のとおり、過去の養育費を請求することは不可能ではありませんが容易とはいえず、少なくとも相手方とトラブルになる可能性が極めて高くなります

そのため、離婚と同時または離婚後すぐに養育費を請求しておくことが大切です。養育費を請求した内容及び請求日が明らかになる内容証明郵便などでも有効であると考えられていますが、最も確実な方法は調停を申し立てることです。

いったん請求しておけば、取り決めをするのに時間がかかっても請求したとき以降の養育費の支払いを受けることができます。例えば、2022年4月に請求し、協議を続け2022年10月に取り決めることができた場合には、2022年4月から10月までの分をまとめて支払ってもらい、11月から毎月支払いを受けるといった処理になります。

「養育費を請求しない」と合意してしまった場合

離婚をするにあたって「養育費を請求しない」という合意をするケースもありますが、このような合意も、詐欺や強迫といった問題がない限り法的に有効です。そのため、一般論としては、そのような合意がある場合に合意を翻して養育費を請求することは難しいでしょう。

しかし、養育費を請求しない合意をしている場合でも、熟慮の末そのような合意がされているケースばかりとは限らず、実際には養育費の支払いがないことで子どもの監護に支障が生じているケースもあります。
このようなケースでは、たとえ養育費を請求しない合意をしていても合意内容が不当であるとされ、養育費を請求し裁判所に認めてもらえる可能性があります。

また、養育費を請求しない合意をしていても、その後収入が激減するなどの事情変更があった場合にも、養育費の増減額を求める場合と同様に合意の変更を求めることが可能です。

まとめ

この記事では、養育費の取り決めについて詳細に解説しました。

婚姻関係が悪化して離婚した夫婦の場合、養育費を取り決めるのに苦労するケースも少なくないかもしれませんが、養育費は何より子どものために必要なお金です。監護親が相当に裕福で非監護親の経済力が乏しいなどの場合でない限り、養育すべき子どもがいるのであれば子どものために養育費を請求したほうがよいでしょう。

養育費の請求にお困りの場合は弁護士に相談、依頼することも有効です。
くずは凛誠法律事務所では、離婚や養育費の相談を髄時お受けしています。初回は60分無料でご相談いただけますので、お困りの方はお気軽にご相談ください

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この記事を書いた人

くずは凛誠法律事務所 代表弁護士 米田光晴
大阪弁護士会所属。大阪市、神戸市の法律事務所で約5年間、勤務弁護士として多数の案件を経験。2022年4月より大阪府枚方市で「くずは凛誠法律事務所」を開設し、代表弁護士として交通事故、離婚、刑事事件など幅広く事件対応を行っている。

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